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留学生活のノウハウ
2026/8/30
2026/9/11

【SHEINの企業価値、4年で約4分の1に 】「激安ファッション」に何が起きている?

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Ryodai

この記事を書いたライター

Ryodai

カナダのブリティッシュコロンビア大学に通い、心理学、認知システム、ビジネスなどを幅広く学ぶ。日本でずっと生まれ育ち、大学はICUに通うが、わずか4か月で退学し初の海外留学を経験する。海外大学生の目線から役に立つ情報を発信します!

こんにちは。現役海外大生のRyodaiです。

数百円のトップスや数千円のワンピースなど、圧倒的な安さで世界中に利用者を広げてきたファッション通販「SHEIN」。

日本でも利用したことがある方は多いと思いますが、そのSHEINをめぐって、今大きな変化が起きています。

SHEINは2026年8月、香港証券取引所への上場に向けたIPO(新規株式公開)の価格を1株48.56香港ドルに設定し、企業全体の価値を示す評価額は約265億ドルとなりました。一見すると非常に大きな企業に見えますが、2022年には約1,000億ドル近い評価を受けていたため、わずか4年間で企業価値はおよそ4分の1まで低下したことになります。

しかも、今回の上場までの道のりも決して順調ではありませんでした。SHEINは当初ニューヨーク、その後ロンドンでの上場を目指していましたが、規制や政治的な問題などから実現せず、最終的に香港へ上場先を変更しています。株式の取引開始は2026年9月1日に予定されています。

一時は世界で最も勢いのあるEC企業の一つとして評価されていたSHEINに、一体何が起きているのでしょうか。

今回は、そもそもSHEINがなぜこれほど急成長できたのか、なぜ服をあれほど安く販売できるのか、そして各国で進む関税や規制の強化によって、その「激安モデル」がどのように変わり始めているのかを解説します。

SHEINの企業価値が約1,000億ドルから265億ドルへ

今回最も注目されているのが、SHEINの企業価値の大幅な低下です。

SHEINは2022年の資金調達時に約1,000億ドル近い評価を受けており、当時はZARAやH&Mなど世界的なファッション企業と比較されるほどの成長企業として注目されていました。

ところが2023年には評価額が約660億ドルまで低下し、今回の香港IPOではさらに約265億ドルとなったため、ピーク時と比べると約73%の下落です。

もちろん、「企業価値が4分の1になった=売上が4分の1になった」という意味ではありません。

企業価値には、現在どれくらい利益を出しているかだけでなく、「この会社が今後どれくらい成長できそうか」という投資家の期待も大きく反映されます。

つまり今回の大幅な評価額低下は、SHEINという会社が突然小さくなったというより、投資家が数年前ほどSHEINの急成長を期待しなくなっていることを表していると言えます。

実際、2026年第1四半期のSHEINの売上成長率は前年同期比わずか1.1%にとどまり、会社側も上半期について同程度の伸びになると予想しています。かつて急激な成長を続けていた企業としては、かなり大きな変化です。

では、そもそもSHEINはどのようにして約1,000億ドルもの評価を受ける企業まで成長したのでしょうか。

そもそもSHEINはなぜここまで成長した?

SHEINの特徴は、単に「中国で安く服を作って海外で販売した」というだけではありません。

従来のアパレル企業では、数か月先にどんな服が売れるのかを予測し、工場へ大量に発注してから店舗や倉庫へ商品を運ぶ方法が一般的でした。

しかし、この方法には大きなリスクがあります。

例えば「今年はこのデザインが流行る」と予想して1万着作ったものの、実際にはほとんど売れなかった場合、大量の在庫を抱えることになります。最終的にはセールで値下げしたり、場合によっては商品を廃棄したりする必要があり、そのコストも商品の販売価格に含まれていきます。

SHEINは、この仕組みを大きく変えました。

新しいデザインを最初から大量生産するのではなく、まず100〜200着ほどの非常に小さな単位で生産し、実際にウェブサイトで販売して反応を見るという方法を採用しています。売れればすぐ追加生産し、反応が悪ければそれ以上作らないため、「何が売れるかを予想して大量生産する」のではなく、「実際に売れているものを大量生産する」ことができます。

この仕組みに、中国南部を中心とした巨大なサプライヤーネットワークやデータ活用、SNSマーケティングなどが組み合わさったことで、SHEINは驚くほど多くの商品を短期間で市場へ投入できるようになりました。

SHEINの服はなぜあんなに安いの?

SHEINの安さを支えてきた理由はいくつかあります。

先ほど紹介した少量生産によって売れ残りを減らせることに加えて、実店舗をほとんど持たずオンライン販売を中心としているため、店舗の家賃や運営費も抑えられます。

さらに大きいのが、中国・広東省周辺に集まる非常に密集したアパレル産業です。

SHEINの中国のサプライヤーネットワークには数千の工場があり、生地だけでなく、ボタンやファスナーといった部品を扱う企業も近い地域に集まっています。そのため、少量の商品を短期間で生産し、売れたものだけを素早く追加するというSHEIN独自のモデルが成立しやすくなっています。

そしてもう一つ、SHEINの世界展開を支えてきた重要な仕組みがありました。

それが、低価格の商品を海外の消費者へ直接送る「小口配送」と、各国の関税免除制度です。

成長を支えた「小口輸入の免税制度」

例えばアメリカでは長い間、海外から届く800ドル以下の商品について、「de minimis(デ・ミニミス)」と呼ばれる制度によって原則として関税が免除されていました。

本来は、非常に安価な荷物について一つ一つ細かく関税を徴収すると、徴収できる税額より税関の事務コストの方が大きくなる可能性があるため設けられていた制度です。

しかし、インターネット通販が急速に普及したことで、この制度の意味合いが変わっていきました。

SHEINやTemuは、中国の工場などからアメリカの消費者へ数十ドル程度の商品を直接発送することで、大規模な倉庫へ一度輸入する従来型の小売企業とは異なり、関税負担を大きく抑えることができました。

2024年度には、アメリカへde minimis制度を利用して入ってきた荷物が13億6,000万件、総額646億ドルに達しており、その約73%が中国からの荷物でした。

つまり、SHEINの「数ドルの商品が中国から直接家に届く」というサービスの裏側には、物流や生産技術だけでなく、こうした貿易制度も大きく関係していたのです。

しかし現在、この前提そのものが崩れ始めています。

アメリカで免税制度が終了

アメリカでは2025年5月、中国・香港から発送される低価格商品に対するde minimis免税措置が終了し、その後8月には対象が世界全体へ拡大されました。

これはSHEINにとってかなり大きな変化でした。

これまで関税なしで消費者へ直接送れていた商品に、新たに税金や通関コストが発生するようになったためです。

SHEIN自身もIPO資料の中で、アメリカで支払う関税・税金が大幅に増えたことで、2026年第1四半期の米国売上高が前年同期比14.3%減少したとしています。会社全体でも同四半期に9,900万ドルの純損失を計上しましたが、この数字については関税だけでなく、会計上の一時的な費用も影響しています。

実際、アメリカの免税制度変更後にはSHEINの商品価格にも変化が見られ、一部商品では値上げが行われました。

競合のTemuでも影響は大きく、制度変更後の2025年5月には米国での1日あたり利用者数が3月と比較して48%減少しています。

「安い商品を中国から直接送る」というモデルにとって、関税免除がなくなることがどれほど大きいのかが分かる数字です。

EUでも格安ECへの規制が強化

そして、同じような動きはアメリカだけではありません。

EUでも2026年7月から、EU域外から輸入される150ユーロ以下の商品に対して3ユーロの暫定的な関税が導入されました。

EUではこれまで150ユーロ以下の商品が原則として関税免除となっていましたが、TemuやSHEINなど越境ECを通じた小口商品の輸入が急増したことで、安全基準を満たさない商品や虚偽申告、EU企業との競争条件などが問題視されるようになっています。

3ユーロという金額だけを見ると、それほど大きくないように感じるかもしれません。

しかし、SHEINが得意としているのは5ユーロ、10ユーロといった非常に安い商品です。100ユーロの商品に3ユーロのコストが増える場合と、5ユーロの商品に3ユーロのコストが加わる場合では、その影響は大きく異なります。

さらに、今回の3ユーロ関税は暫定措置にすぎず、EUは2028年をめどに150ユーロ以下の商品に対する関税免除そのものを廃止する予定です。

Reutersによると、SHEINの売上の半分以上をアメリカとヨーロッパが占めているため、両方の主要市場で同時に低価格輸入品への規制が強まっていることは、同社のビジネスにとって無視できない問題となっています。

Temuなどとの競争も激化

SHEINが直面している問題は関税だけではありません。

ここ数年は、Temuをはじめとする格安ECとの競争も急速に激しくなっています。

ファッションに強いSHEINに対し、Temuは衣類だけでなく、電子機器や家具、日用品など幅広い商品を低価格で展開し、大規模な広告投資によって世界各国で利用者を増やしてきました。

競争相手が増えれば、SHEINも広告や値引きを増やして新しい顧客を獲得しなければなりません。

実際、今回の香港IPOをめぐっても、投資家からは「新しい顧客を獲得するためのコストが上昇する中で、SHEINが今後も利益を出しながら成長できるのか」が懸念されています。

さらに、SHEINは商品や労働環境、データ保護、環境への影響などをめぐってアメリカやEUで複数の調査・規制にも直面しています。

そのため現在のSHEINには、

関税負担の増加
+競争激化
+成長率の低下
+規制強化
+顧客獲得コストの上昇

という複数の問題が同時に起きていることになります。

これが、企業価値が2022年の約1,000億ドルから約265億ドルまで低下した大きな背景です。

SHEINはもう成長できないの?

ここまで読むと、「SHEINはかなり危ない会社なのでは?」と思うかもしれませんが、そこまで単純な話でもありません。

今回のIPOでもSHEINは約17億ドルを調達する予定で、香港では2026年最大規模のIPOとなります。また、現在も世界約160カ国で商品を販売しており、SHEINが世界有数のオンラインファッション企業であることに変わりはありません。

さらに同社は、これまで中国から直接発送していたモデルを少しずつ変更し、現地倉庫の活用や中国以外での生産拡大なども進めています。

例えばインドでは現地企業Relianceと協力し、SHEINの小ロット生産モデルを再現しながら、将来的にはインドで作った商品を海外へ輸出する計画も進められています。

つまり、SHEINそのものがなくなるという話ではなく、これまで圧倒的な成長を支えてきた

「中国で極めて安く作り、小さな荷物として関税を抑えながら世界中の消費者へ直接送る」

というモデルを、そのまま続けることが難しくなっているという方が正確です。

今回の企業価値の低下は、SHEINの終わりというよりも、これまでの“激安ECの黄金時代”が転換点を迎えていることを象徴する出来事なのかもしれません。

海外で生活する大学生にも関係する?

ここまでの話は、基本的にはSHEINという企業と、世界のEC・貿易政策に関するニュースです。

ただ、海外で生活する大学生にとっても、まったく無関係というわけではありません。

海外大学へ進学すると、服だけでなく、寝具や収納用品、キッチン用品など、新生活を始めるためにさまざまなものを揃える必要があり、SHEINやTemuなどの格安通販を利用する学生もいると思います。

現時点で「SHEINの商品が一気に高くなる」と断言できる状況ではありませんし、企業側が関税を負担したり、現地倉庫を活用したりすることで価格を維持する可能性もあります。

一方で、アメリカではすでに免税制度の終了後に価格や配送方法の変更が起きており、EUでも同じように規制が強化されています。

そのため今後は、「海外から買えばとにかく安い」という状況が少しずつ変わり、現地の店舗やAmazonなどの国内配送サービスと価格差が縮まっていく可能性もありそうです。

まとめ

今回は、SHEINの企業価値が2022年の約1,000億ドルから、2026年の香港IPOでは約265億ドルまで低下した背景について紹介しました。

SHEINは、小ロットで商品を生産し、実際の需要を見ながら追加生産する仕組みや、中国の巨大なサプライチェーン、SNSを中心としたマーケティング、そして低価格商品の関税免除制度などを組み合わせることで、世界的なファッション企業へ急成長しました。

しかし現在は、その成長を支えてきた前提が少しずつ変わり始めています。

アメリカでは低価格商品の関税免除制度が終了し、EUでも150ユーロ以下の商品に3ユーロの関税が導入され、2028年には関税免除そのものが廃止される予定です。さらにTemuなどとの競争や各国での規制強化も重なり、SHEINの2026年第1四半期の売上成長率は1.1%まで鈍化しています。

一時は約1,000億ドルの価値があると評価された企業が、わずか4年で約4分の1まで評価を落としたというニュースは、単に「SHEINの人気が落ちた」という話ではありません。

その背景には、これまで私たちが当たり前のように利用してきた**「海外から数百円の商品を、驚くほど安い送料で直接購入できる仕組み」そのものの変化**があります。

SHEINが今後も「激安」を維持できるのか、それとも生産・物流・価格の仕組みを大きく変えていくのか。

今回の香港上場は、SHEINだけでなく、Temuを含めた世界の格安ECが次の段階に入る一つの転換点になりそうです。


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参考文献

Reuters.(2026年8月27日). “Shein's Hong Kong IPO pricing values company at $26.5 billion, sources say.”
SHEINの香港IPO価格、265億ドルの企業価値、2022年・2023年との評価額比較、成長率について参照。
Reuters – Shein's Hong Kong IPO pricing values company at $26.5 billion

Reuters.(2026年8月23日). “Fast-fashion giant Shein shrinks value to up to $27 billion in Hong Kong IPO.”
企業価値低下の背景、2026年第1四半期の成長率、米国売上高への関税の影響などを参照。
Reuters – Shein shrinks value in Hong Kong IPO

Reuters.(2026年8月28日). “How Shein had to make peace with China to finally go public.”
ニューヨーク・ロンドンでの上場計画から香港上場へ至った経緯について参照。
Reuters – How Shein finally reached an IPO

Reuters.(2025年8月29日). “How the end of de minimis exemption will impact U.S. shoppers and businesses.”
アメリカのde minimis制度、2024年度の小口輸入件数および制度廃止の影響について参照。
Reuters – End of the U.S. de minimis exemption

European Commission.(2026年6月29日). “Ensuring fairness and safety: €3 customs duty for low-value parcels.”
EUが導入した150ユーロ以下の小口商品への3ユーロ関税について参照。
European Commission – €3 customs duty for low-value parcels

Council of the European Union.(2026年2月11日). “Council gives final green light to new customs duty rules for small parcels.”
2028年に予定される150ユーロ以下の商品への関税免除廃止、新しいEU税関制度について参照。
Council of the EU – New customs duty rules for small parcels

McKinsey & Company.(2026年). “Six breakthrough business models reshaping global growth.”
SHEINの小ロット・オンデマンド型生産モデルについて参照。
McKinsey – Six breakthrough business models reshaping global growth

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