- 2026/8/15
- 2026/8/23
【ヨーロッパで電力価格20%超上昇】 記録的な熱波が電力供給を直撃
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この記事を書いたライター
Ryodai
カナダのブリティッシュコロンビア大学に通い、心理学、認知システム、ビジネスなどを幅広く学ぶ。日本でずっと生まれ育ち、大学はICUに通うが、わずか4か月で退学し初の海外留学を経験する。海外大学生の目線から役に立つ情報を発信します!
こんにちは。現役海外大生のRyodaiです。
ヨーロッパでは今年の夏、各地で厳しい暑さが続いています。
「ヨーロッパの熱波」と聞くと、40℃近い気温や山火事、水不足といったニュースをイメージする方が多いかもしれません。しかし今回、この暑さの影響は人々の生活や健康だけにとどまらず、ヨーロッパの電力供給にまで広がっています。
8月11日には、フランスの翌日物電力価格が前日から21.8%上昇して1MWhあたり142.5ユーロとなり、ドイツでも22.8%上昇して138.5ユーロとなりました。背景にあるのが、熱波によるフランスの原子力発電の出力低下と、ドイツでの風力発電量の減少です。
さらにその数日後には、フランスで熱波の影響を受ける原子力発電の規模がさらに拡大し、8月14日には9基で最大9.4GW、フランスの原子力発電能力全体のおよそ15%にあたる出力が制限される見通しとなりました。
一見すると「ヨーロッパの電力会社のニュース」に見えますが、現地で家を借り、電気を使って生活する海外大学生にとっても無関係ではありません。
今回は、なぜ暑くなると電力価格まで上がるのか、フランスの原子力発電やドイツの風力発電で何が起きているのか、そしてヨーロッパで生活する学生にはどのような影響が考えられるのかを解説します。
ヨーロッパで電力価格が20%以上上昇
ヨーロッパでは2026年の夏、すでに何度も熱波が発生しており、フランスをはじめとする各国で40℃前後まで気温が上がる日も出ています。
こうした暑さが続く中、8月11日にはフランスの翌日物電力価格が前日比21.8%上昇して142.5ユーロ/MWhとなり、ドイツでも22.8%上昇して138.5ユーロ/MWhとなりました。
もちろん、これは家庭の電気料金そのものではなく、電力会社などが電気を売買する「卸売市場」での価格です。
それでも、わずか1日で20%以上価格が動いたことからも、今回の熱波がヨーロッパの電力システムに大きな負担をかけていることが分かります。
特に影響を受けているのがフランスです。
フランスは年間の電力生産のおよそ70%を原子力発電に依存していますが、8月13日時点では、熱波によって翌14日に最大9.4GW、原子力発電能力全体のおよそ15%の出力が制限される見通しとなりました。
「暑くなったら太陽光発電は増えそうだけど、なぜ原子力発電が減るの?」
と思った方もいるかもしれません。
実は、ここに今回のニュースの重要なポイントがあります。
なぜ暑くなると原子力発電が止まるの?
原子力発電所では、発電の過程で発生する熱を冷やすために大量の水が必要で、フランスの多くの原子力発電所では川の水が利用されています。
発電所で使用された水は処理された後に川へ戻されますが、当然ながら、発電所を通った水はもともとの川の水より温かくなっています。
普段であれば大きな問題にはなりませんが、熱波によってもともとの川の水温が高くなっている場合、さらに温かい水を大量に戻すと、川の生態系に悪影響を与える可能性があります。
そのためフランスでは、河川の水温などが一定の基準を超えた場合、環境保護のために原子力発電所の出力を落としたり、場合によっては発電を停止したりするルールが設けられています。
つまり今回起きているのは、
熱波で川の水温が上昇
→ 原子力発電所が十分に稼働できなくなる
→ 発電できる電力量が減少する
という現象です。
6月の熱波でもすでに同様の問題が起きており、フランスでは一時、原子力発電の出力が4.1GW削減されていました。さらに8月の熱波では影響が拡大し、複数の原子炉が完全停止または出力制限の対象となっています。
ドイツでは風力発電も減少
一方、フランスの隣国ドイツでは、別の問題が起きています。
ドイツでは再生可能エネルギーの導入が進んでいますが、今回の熱波では風が弱くなり、風力発電の発電量が大きく低下しました。
8月11日時点の予測では、ドイツの風力発電量は季節平均を約60%下回る4.7GWまで減少するとされていました。
熱波というと「強い日差し」をイメージするので、再生可能エネルギーにとってプラスに見えるかもしれませんが、実際の電力システムはそれほど単純ではありません。
太陽光発電は日中に発電量を増やすことができますが、夜になれば当然発電できなくなります。また、熱波の際には風が弱い気象条件になることもあり、風力発電量が大きく減少するケースがあります。
すると、足りない電力を補うためにガス火力発電などを増やす必要が出てきます。
特に今回は、中東情勢を背景としてガス価格にも上昇圧力がかかっているため、比較的安い原子力や風力による発電が減り、よりコストの高い発電方法を増やさなければならないことが、電力価格を押し上げる要因の一つとなっています。
暑いのに電力供給が減るという問題
さらに厄介なのが、熱波の際には電力供給が減る一方で、電力を使いたい人は増えるということです。
気温が上がれば、家庭やオフィス、店舗などでエアコンや扇風機を使う時間が長くなり、電力需要は増加します。
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の冷房に使われる電力量は2015年から約50%増加しており、現在では年間約2,900TWhと、EU全体の年間電力需要を上回る規模になっています。
つまり熱波の際には、
エアコン利用増加で電力需要が増える
一方で、
原子力や風力などの発電量が減る
という、需要と供給の両側から電力市場に圧力がかかることになります。
電気を必要とする人が増えているのに、供給できる電力量が減れば、当然ながら電力価格は上がりやすくなります。
今回ヨーロッパで起きている電力価格の急上昇は、まさにこの状況によるものです。
夏の電力価格が「冬並み」に
今回の現象は8月だけに突然始まったものではありません。
ヨーロッパでは6月や7月にも熱波が発生しており、暑さによる冷房需要の増加と発電量の低下が重なったことで、夏の電力価格が通常であれば需要の高い冬と同じような水準まで上昇する場面が出ていました。
例えばドイツでは、6月23日の翌日物電力価格が210ユーロ/MWhまで上昇し、フランスやイギリスでも2025年1月以来となる高い水準を記録しています。
ヨーロッパでは冬の暖房によって電力・エネルギー需要が増えるため、これまでは冬のエネルギー価格が特に注目されてきました。
しかし、今後は夏にも「冷房需要の増加」と「暑さによる発電能力低下」が同時に起こることで、電力価格が大きく動く可能性があるということです。
実際、Copernicus Climate Change Serviceによると、ヨーロッパは世界平均の2倍以上のペースで温暖化しており、熱波の影響は今後のエネルギーシステムを考えるうえでも重要な問題になっています。
海外大学生の生活にはどう影響する?
ここまで聞くと、
「電力市場の話は分かったけれど、大学生の生活とそこまで関係あるの?」
と思うかもしれません。
しかし、ヨーロッパで一人暮らしやシェアハウスをする学生にとって、電気代は毎月の生活費の一部です。
特に夏場は、暑さそのものによって電気を使う量が増えるため、電力価格とは別の意味でも出費が増えやすくなります。
電気代そのものが増える可能性
最も分かりやすいのは、エアコンや扇風機などを使う時間が増えることで、家庭の電力使用量そのものが増えることです。
例えば、普段はほとんど冷房を使わない学生でも、35℃を超えるような日が何日も続けば、エアコンや扇風機を長時間使わざるを得ない場合があります。
つまり、電力単価が変わらなかったとしても、
使う電気の量が増えれば、その分だけ電気代は高くなります。
そのうえで、卸売電力価格の高い状態が長期間続き、それが家庭向け料金にも反映されるようになれば、使用量と単価の両方から生活費が増える可能性があります。
家賃に光熱費が含まれているかで影響は大きく変わる
ただし、海外大学生の場合、住んでいる場所によって影響はかなり違います。
大学寮の中には電気・水道・暖房などがResidence Feeに含まれているところもありますし、シェアハウスでも「Utilities Included」として光熱費込みの家賃になっている場合があります。
その場合、電力価格が上がったからといって、翌月の支払いがすぐ増えるとは限りません。
一方で、家賃とは別に自分で電気会社と契約している場合には、毎月の使用量や契約している料金プランによって支払額が変わるため、熱波の影響をより直接的に感じる可能性があります。
そのため、ヨーロッパで家を探す際には月々の家賃だけを見るのではなく、
「Utilitiesは含まれているのか」
まで確認したうえで、本当に毎月いくらかかるのかを比較することが大切です。
大学や店舗のコストにも影響する可能性
電力を大量に使うのは家庭だけではありません。
大学も教室、図書館、研究設備、学生寮、食堂などを運営するために多くの電力を使用していますし、スーパーやレストランでも冷蔵・冷凍設備や空調を動かすために電気が必要です。
そのため、電力価格の高い状態が長期化すれば、大学施設や学生寮、飲食店などの運営コストにも影響が広がる可能性があります。
もちろん、それがすぐ翌月の学費やMeal Plan料金の値上げにつながるという意味ではありませんが、電気代は私たちが直接支払う請求書だけではなく、さまざまなサービスの価格を構成するコストの一つでもあります。
電力価格が20%上がっても電気代が20%上がるわけではない
ここは今回の記事で特に注意しておきたいポイントです。
ニュースでは「フランスの電力価格が21.8%上昇」「ドイツでは22.8%上昇」と報じられていますが、これは電力の卸売市場における翌日物価格の変化であり、一般家庭の電気料金が突然20%以上値上がりしたという意味ではありません。
私たちが実際に支払う電気料金には、電力そのものの仕入れ価格だけでなく、送電網の利用料金、税金などさまざまなコストが含まれています。
さらに、固定価格の契約をしている家庭であれば、卸売価格が一時的に上昇しても、その変化がすぐ家庭の請求額に反映されるとは限りません。
EUエネルギー規制機関ACERも、卸売価格と家庭向け電気料金の間には時間差が生じることがあり、固定価格契約や電力会社による事前の価格固定などによって、卸売市場の値動きがすぐには消費者へ反映されない場合があるとしています。
実際、EUの家庭向け電気料金は2025年後半の平均で100kWhあたり28.96ユーロと比較的安定していました。ただし、これは2022年のエネルギー危機以前と比べると依然として高い水準です。
そのため、今回の20%超の価格上昇だけを見て「ヨーロッパの学生の電気代がすぐ20%上がる」と考える必要はありません。
重要なのは、こうした熱波が繰り返され、卸売価格の高い状態が長期化すれば、将来的に家庭向け料金にも影響が波及する可能性があるという点です。
電気代上昇に備えて学生が確認しておきたいこと
学生自身が熱波やヨーロッパの電力価格をコントロールすることはできませんが、住居選びや普段の生活の中で確認しておけることはいくつかあります。
1. 家賃にUtilitiesが含まれているか確認する
ヨーロッパで部屋を探す際には、表示されている家賃だけで判断せず、電気・水道・ガスなどが料金に含まれているかを確認しておきましょう。
例えば月800ユーロの部屋と850ユーロの部屋があったとしても、後者にUtilitiesが含まれているのであれば、実際の毎月の支出ではそれほど差がない可能性があります。
特に夏の電気代や冬の暖房費を考えると、単純な家賃だけではなく、光熱費を含めたTotal Costで比較することが重要です。
2. 自分の電気料金プランを確認する
家賃とは別に電気料金を支払っている場合には、自分がどのような契約をしているのか一度確認してみるのがおすすめです。
固定価格なのか変動価格なのかによって、市場価格の変化が請求額に反映されるタイミングは変わります。
特に初めて海外で一人暮らしをすると、「電気会社と契約したけれど、料金プランについてはよく分からない」ということも珍しくありません。
毎月の請求書を見るだけでなく、1kWhあたりの料金や基本料金、契約期間なども確認しておくと、自分の電気代がなぜその金額になっているのか把握しやすくなります。
3. 冷房は「我慢」ではなく効率よく使う
電気代を抑えたいからといって、極端な暑さの中で冷房を我慢するのはおすすめできません。
一方で、日中はカーテンやブラインドを閉めて直射日光を防ぐ、比較的涼しい時間帯に換気する、扇風機を併用するなど、部屋に入る熱を減らすことで冷房に必要な電力を抑えられる場合があります。
熱波の際には節約以上に体調管理が重要なので、無理に電気を使わないのではなく、必要な冷房を使いながら、無駄な消費を減らすという考え方が大切です。
まとめ
今回は、2026年夏のヨーロッパを襲っている熱波と、電力価格への影響について紹介しました。
8月11日には、フランスの翌日物電力価格が前日比21.8%、ドイツでは22.8%上昇し、その背景には、熱波によるフランスの原子力発電の出力低下や、ドイツの風力発電量の減少がありました。
さらにフランスでは、8月14日に熱波による原子力発電の出力制限が最大9.4GWに達する見込みとなり、これは国内の原子力発電能力全体のおよそ15%に相当します。
今回のニュースで興味深いのは、暑くなることでエアコンの利用が増えて電力需要が高まる一方、同じ暑さによって原子力発電や風力発電の供給量が減ってしまうという点です。
つまり熱波は、単に「暑くて電気をたくさん使う」というだけではなく、電気を作る側にも同時に影響を与えているのです。
もちろん、今回報じられている20%以上の価格上昇は卸売市場での話なので、ヨーロッパに住む学生の電気代がすぐに20%上昇するわけではありません。
ただ、熱波がより頻繁になり、こうした状況が長期間続くようになれば、家庭の電気料金や住居費、さらには大学や店舗などの運営コストにまで影響が広がる可能性があります。
一見すると「ヨーロッパの猛暑」という気象ニュースですが、その裏では発電所、電力市場、そして私たちの毎月の生活費までつながっています。
海外で生活する学生にとっても、家を探すときには家賃だけを見るのではなく、Utilitiesが含まれているのか、自分で支払う場合にはどのような電気料金プランなのかまで確認しておくことが、これからはより重要になりそうです。
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参考文献
Reuters.(2026年8月11日). “European power prices jump as heatwave curbs French nuclear output, German wind.”
ヨーロッパの熱波によるフランス・ドイツの電力価格上昇、原子力・風力発電への影響を参照。
Reuters.(2026年8月13日). “Heatwave expected to remove 15% of France's nuclear capacity on Friday.”
熱波によるフランスの原子力発電所の出力制限および電力輸出への影響を参照。
Reuters.(2026年7月31日). “As Europe heats up, summer power prices match winter peaks.”
2026年夏の熱波とヨーロッパの電力価格、冷房需要、発電能力低下との関係を参照。
Reuters.(2026年6月24日). “Europe's heatwave curbs French nuclear plants.”
6月の熱波によるフランスの原子力発電量低下、電力輸出への影響を参照。
Électricité de France (EDF).(2026年7月31日). “2026 Half-Year Results.”
熱波時に河川水温に関する規制を順守するため、一部原子力発電所で出力削減・停止が発生していることを参照。
International Energy Agency (IEA).(2026年7月10日). “Cooling a hotter world: El Niño meets strong growth in global electricity demand.”
世界の冷房による電力需要の増加について参照。
European Union Agency for the Cooperation of Energy Regulators (ACER).(2025–2026年). “Energy Retail and Consumer Protection / Key Developments in EU Electricity and Gas Markets.”
卸売電力価格と家庭向け電気料金の関係、固定価格契約などによる価格転嫁の時間差について参照。
Eurostat.(2026年5月5日). “EU household electricity prices stable in 2025.”
EUの家庭向け電気料金の推移について参照。
Copernicus Climate Change Service. “European State of the Climate 2025.”
ヨーロッパの気温上昇と気候変動の長期的な傾向について参照。


