- 2026/8/30
- 2026/9/20
【カナダの家賃、22カ月連続で前年割れ】 トロントでは「底打ち」の兆しも?
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この記事を書いたライター
Ryodai
カナダのブリティッシュコロンビア大学に通い、心理学、認知システム、ビジネスなどを幅広く学ぶ。日本でずっと生まれ育ち、大学はICUに通うが、わずか4か月で退学し初の海外留学を経験する。海外大学生の目線から役に立つ情報を発信します!
こんにちは。現役海外大生のRyodaiです。
世界的にも「家賃が高い国」というイメージの強いカナダですが、その住宅市場に少し意外な変化が起きています。
Rentals.caと不動産調査会社Urbanationが発表した最新のNational Rent Reportによると、2026年7月のカナダ全体の平均募集家賃は月額2,037カナダドルとなり、前年同月から4.0%下落しました。
これで、前年同月と比べた家賃の下落は22カ月連続となります。
さらに、2024年7月と比較すると平均募集家賃は7.5%下がっており、7月としては2022年以来の低い水準まで戻っています。
数年前までカナダでは、人口の急増や住宅不足を背景に家賃が急激に上昇していましたが、ここ最近は状況が変わり、新しい賃貸住宅の供給が増える一方で人口増加が鈍化したことで、借り手側に少しずつ選択肢が戻ってきています。
ところが、最新データをもう少し詳しく見ると、単純に「カナダの家賃がどんどん安くなっている」とも言い切れません。
7月の平均募集家賃は前年より4.0%低かった一方、前月からは0.2%上昇しており、これで4カ月連続の前月比上昇となりました。特にトロントでは家賃が前月から大きく上昇しており、これまで続いてきた下落局面が転換点を迎え始めている可能性も指摘されています。
さらに8月、カナダ政府とトロント市は27億カナダドル以上を投じ、5,600戸を超える新たな賃貸住宅を建設する計画を発表しました。
一体、カナダの住宅市場では何が起きているのでしょうか。
今回は、なぜカナダの家賃が2年近く下がり続けてきたのか、なぜトロントでは再び上昇の兆しが見え始めているのか、そして政府が今なお大規模な住宅建設を進めている理由について解説します。
カナダの家賃が22カ月連続で前年割れ
2026年7月、カナダ全体の平均募集家賃は月額2,037カナダドルとなり、前年同月から4.0%下落しました。
これで前年比での下落は22カ月連続となり、2024年7月と比較すると7.5%低い水準です。
ただし、ここで使われている「平均家賃」については少し注意が必要です。
Rentals.caのデータは、現在住んでいる人が実際に支払っている家賃の平均ではなく、**その月に新しく募集されている物件のAsking Rent(募集家賃)**を集計したものです。
例えば、何年も前から同じアパートに住んでいて月1,800ドルを払っている人の家賃ではなく、「今この部屋を借りるなら月2,300ドルです」と市場に出ている物件の価格を見るデータです。
そのため、これから新しく家を探す人が実際に目にする価格の動きを把握するうえでは非常に参考になる一方で、「カナダ人全員の家賃が4%下がった」という意味ではありません。Rentals.ca自身も、現在住んでいる人も含めて調査するCMHCの家賃データとは性質が異なると説明しています。
では、なぜ新しく募集される物件の家賃が2年近く下がり続けているのでしょうか。
そもそも、なぜカナダの家賃はここまで上がっていた?
現在の下落を見る前に、少し前のカナダの住宅市場を振り返る必要があります。
カナダでは長年、トロントやバンクーバーなどの大都市を中心に、住宅の供給不足が大きな問題となってきました。
そこへコロナ禍後の人口増加が重なります。
移民や留学生、外国人労働者などの流入によって住宅を必要とする人が急速に増えた一方、住宅は短期間で簡単に増やすことができません。
アパート一棟を建てるだけでも土地の確保、建築許可、資金調達、実際の建設などに数年かかるため、
住みたい人の増加スピード > 新しく住宅が増えるスピード
という状態が続きました。
その結果、特に2022年から2024年にかけて賃貸市場は急速に逼迫し、Rentals.caによるとカナダの平均募集家賃は2024年5月に2,202カナダドルまで上昇しています。2021年4月の1,662ドルと比較すると、わずか3年ほどで30%以上上昇した計算になります。
しかし、その後、この「需要と供給」の両方に大きな変化が起こりました。
家賃下落の背景① 人口増加が急速に鈍化
まず大きく変わったのが、カナダの人口です。
Statistics Canadaによると、2026年1月から4月にかけてカナダの人口は約5万5,000人減少し、4月1日時点で約4,142万人となりました。
わずか0.1%の減少ではありますが、急速な人口増加が続いてきたカナダにとっては大きな変化です。
特に減少しているのが、留学生や外国人労働者などを含むNon-Permanent Residents(非永住者)です。
2026年第1四半期だけで非永住者は約11万8,000人減少し、4月1日時点では約256万人となりました。前四半期から4.4%の減少です。
これは、カナダ政府がここ数年で移民・一時滞在者政策を大きく見直してきたこととも関係しています。
Rentals.caによると、カナダのStudy Permit保有者は2024年の100万人超から、2026年3月には約66万人まで減少しており、2026年第1四半期に新しくカナダへ入国したStudy Permit保有者も2024年同期と比べて79%減少しました。
人口が急速に増えていた時期には、一つの空室に多くの借り手が集まりやすかったため、大家側も高い家賃を提示できました。
一方、住宅を探す人の増加が鈍れば、同じ物件を複数の大家が奪い合うのではなく、今度は大家側が入居者を取り合う状況が生まれます。
これが、家賃に下落圧力がかかっている一つの理由です。
家賃下落の背景② 賃貸住宅の供給が増加
さらに、需要が弱くなるタイミングで、新しい賃貸住宅が大量に市場へ出てきました。
CMHCによると、2025年はカナダ各地で賃貸住宅の建設が非常に活発となり、Calgary、Edmonton、Ottawa、Halifax、Montréalでは賃貸住宅の着工数が過去最高を記録し、Torontoでも過去2番目の高水準となりました。
カナダ全体で建設中の賃貸住宅数も、過去10年間の平均のおよそ2倍という高い水準にあります。
その結果、2025年にはPurpose-Built Rental、つまり最初から賃貸用として建設された住宅の全国空室率が、前年の2.2%から3.1%まで上昇しました。
さらに2026年に入っても新築物件の完成が続いており、CMHCは特に2020年以降に建てられた新しい賃貸住宅や、大学などPost-Secondary Institutionの周辺にある物件で空室率が高くなっていると報告しています。
借り手からすると、これはかなり重要な変化です。
同じ地域に空室が増えれば、大家側は単に家賃を下げるだけでなく、
「最初の1カ月無料」
「2カ月分の家賃無料」
といったキャンペーンを使って入居者を集めるようになります。
実際、Greater Toronto and Hamilton Areaの新築賃貸住宅では、以前は1カ月分の家賃無料が一般的だったのに対し、2026年第1四半期には2カ月分無料が最も一般的なインセンティブになったとUrbanationは報告しています。
つまり、
人口増加の鈍化によって需要が弱まる
+
数年前から建設していた賃貸住宅が大量に完成する
という二つの動きが同時に起きたことで、カナダの家賃が下がりやすい環境が生まれたわけです。
「家賃が下がった」といっても、まだ安くはない
ただし、ここで誤解してはいけないのが、
「家賃が下がっている=カナダの住宅問題が解決した」
というわけではないことです。
2026年7月の平均募集家賃は2,037カナダドルで、2年前から7.5%下落しているとはいえ、コロナ禍だった2021年4月の1,662ドルと比べると依然としてかなり高い水準です。
Rentals.caが2026年春に行った調査でも、回答者の72%が月2,000ドル以下の物件を探しており、70%が「高い家賃」を住宅探しにおける最大の問題として挙げています。
つまり現在起きているのは、
「家賃が安くなった」というより、「数年間続いた急激な家賃上昇が巻き戻されている」
と考えた方が近いでしょう。
そして最新のデータを見ると、その下落もそろそろ止まり始める可能性が出てきています。
トロントでは早くも反転の兆し?
その動きが特に目立っているのがTorontoです。
2026年7月、TorontoのApartment・Condoの平均募集家賃は2,577カナダドルとなり、6月から1.6%上昇しました。
これはカナダの主要6都市の中で最も大きな前月比上昇で、前年同月比でもわずか0.6%の下落まで縮小しています。
さらにTorontoで募集されている物件数は前年から約6%減少しており、Rentals.caとUrbanationは、住宅供給が再び少しずつ引き締まり始めている可能性を指摘しています。
ただし、これを見て「Torontoの家賃が再び急騰する」と判断するのはまだ早いでしょう。
7月はもともと引っ越し需要が高くなる時期ですし、Toronto以外では現在も家賃が下がっている都市が多く、例えばVancouverとCalgaryでは前年同月比4.5%下落しています。
カナダ全体でもCMHCは、2026年について新しい賃貸住宅の供給増加と人口増加の鈍化によって、Rental Marketは引き続き緩和すると予測しています。
そのため今の状況は、
「家賃下落が終わった」というより、「下落のスピードが弱まり、Torontoなど一部の都市では底打ちの兆しが出始めている」
と見るのがよさそうです。
カナダ政府、トロントに5,600戸以上の住宅を建設へ
そんな中、カナダ政府が8月に発表したのが、Torontoでの大規模な住宅建設計画です。
カナダ政府とToronto市は今後3年間で27億カナダドル以上を投資し、18以上の住宅プロジェクトを通じて5,600戸を超える新しい賃貸住宅を建設すると発表しました。
そのうち1,800戸以上はAffordable Housing、Supportive Housing、Rent-Controlled Housingなどとなる予定で、5,600戸のうち4,500戸以上については2026年末までに着工する計画です。
興味深いのは、「現在家賃が下がっているにもかかわらず、なぜ政府はさらに住宅を増やそうとしているのか」という点です。
理由の一つは、現在の住宅供給の増加が永遠に続くわけではないからです。
今完成している住宅の多くは、数年前に金利や市場環境が今より良かった時期に計画されたものです。
一方、現在は建築費や土地代が高く、Condoの販売も低迷しているため、新しい住宅プロジェクトの延期や中止が増えています。
CMHCも、現在完成している大量の住宅は数年前の投資判断によるものであり、今後着工数が減れば、数年後には再び新規供給が不足する可能性があると警告しています。
つまり政府としては、
「今ちょっと家賃が下がっているから住宅問題は解決」
ではなく、
数年先に再び住宅不足へ戻らないために、今のうちに建設を続ける必要がある
と考えているわけです。
それでも住宅不足は解決したわけではない
ここまでを見ると、カナダの住宅市場には少し不思議な状況が生まれていることが分かります。
現在は、
人口増加が鈍る
→ 住宅需要が弱くなる
→ 過去に建設を始めた住宅が完成する
→ 空室が増える
→ 家賃が下がる
という流れが起きています。
ところが、その家賃下落によって新しい住宅を建てても採算が取りづらくなると、
新規プロジェクトが減る
→ 数年後に完成する住宅も減る
ことになります。
その頃に再び人口や住宅需要が増えれば、今度は住宅不足に戻ってしまう可能性があります。
CMHCも2026年夏の見通しで、Rental Marketは当面緩和する一方、歴史的な高水準に達した賃貸住宅建設は今後徐々に減速すると予測しています。
そのため、22カ月連続の家賃下落は借り手にとって良いニュースではあるものの、カナダが長年抱えてきた「十分な住宅をどう継続的に作るのか」という問題そのものが解決したわけではありません。
海外で暮らす大学生にはどんな影響がある?
ここまでの話は、基本的にはカナダ全体の住宅市場についてのニュースです。
ただ、カナダで大学生活を送る学生にとっても、住宅市場の変化は当然無関係ではありません。
特に大学寮に入らず、Off-Campus Housingを探す場合には、今回紹介した「募集家賃」の変化を直接目にすることになります。
そして現在は、少なくとも数年前と比べると、借り手側が少し交渉しやすい市場になっています。
CMHCも2026年の調査で、新築住宅を中心に空室が増えたことで、借り手に物件の選択肢や交渉余地が生まれていると指摘しており、特にPost-Secondary Institution周辺の新しい物件では空室率が高くなっています。
ただし、Torontoで7月の家賃が上昇したように、都市や時期によって状況は大きく異なります。
特に大学が始まる直前の8〜9月は学生の引っ越しが重なりやすいため、「カナダ全体では家賃が4%下がっている」という数字だけを見て安心するのではなく、実際に住む地域の相場を確認することが重要です。
カナダで部屋を探すときに意識したいこと
1. 前年の家賃だけで予算を決めない
カナダ全体では家賃が下落していますが、Torontoのようにすでに前月比で上昇している都市もあります。
留学予算を立てる場合には「去年より家賃が下がっているらしい」というニュースだけで判断せず、渡航する数カ月前から実際の募集物件を確認しておくのがおすすめです。
2. 家賃だけでなくキャンペーンも確認する
現在のカナダでは、新しい賃貸住宅を中心に「1カ月無料」「2カ月無料」といった入居キャンペーンが増えています。
例えば月2,400ドルの物件でも、12カ月契約で2カ月分無料であれば、実質的な年間負担は大きく下がります。
表示されているMonthly Rentだけでなく、DepositやUtilities、入居特典まで含めた年間のTotal Costで比較すると、実際に安い物件を見つけやすくなります。
3. 少し早めに市場を見始める
市場全体が借り手に有利でも、大学周辺の人気エリアや安い物件には依然として応募が集中する可能性があります。
特に9月入学の場合は多くの学生が同じ時期に住宅を探すため、大学のHousing情報や現地のRental Websiteを早めに確認し、どの程度の家賃が相場なのか把握しておくと安心です。
まとめ
今回は、カナダで続いている家賃下落と、その流れに少しずつ変化が見え始めている住宅市場について紹介しました。
2026年7月のカナダの平均募集家賃は2,037カナダドルとなり、前年から4.0%下落したことで、前年比での家賃下落は22カ月連続となりました。
その背景には、カナダの人口増加が急速に鈍化する一方で、数年前から建設されていた大量の賃貸住宅が完成し、住宅の需要と供給のバランスが変わったことがあります。
一方、Torontoでは7月のApartment・Condoの平均募集家賃が前月から1.6%上昇して2,577カナダドルとなり、前年同月比でも0.6%の下落まで縮小しています。
そのため現在のカナダは、
「家賃が下がり続けている市場」から、「家賃下落が少しずつ落ち着き始めた市場」へ移行している可能性がある
という、少し微妙なタイミングにあります。
さらにカナダ政府とToronto市は27億カナダドル以上を投じ、5,600戸を超える新たな賃貸住宅を建設すると発表しており、短期的に家賃が下がっている中でも、長期的な住宅不足を防ぐための供給拡大を続けています。
ここ数年、「カナダ=住宅不足で家賃が上がり続ける」という状況が当たり前のようになっていましたが、人口政策や住宅建設の変化によって、その流れにもようやく変化が出始めています。
ただ、現在の家賃水準は依然として高く、さらに今後住宅建設が減れば、再び供給不足になる可能性も残っています。
今回の22カ月連続下落が本当にカナダの住宅市場の正常化につながるのか、それとも一時的な調整に終わるのか、今後の動きにも注目です。
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参考文献
Rentals.ca & Urbanation.(2026年8月6日). “August 2026 National Rent Report.”
2026年7月のカナダ全国および主要都市の募集家賃、Torontoの家賃動向について参照。
Rentals.ca – August 2026 National Rent Report
Statistics Canada.(2026年6月17日). “Canada's population estimates, first quarter 2026.”
2026年第1四半期の人口減少、非永住者数の変化について参照。
Statistics Canada – Population estimates, Q1 2026
Canada Mortgage and Housing Corporation (CMHC).(2026年3月). “Spring 2026 Housing Supply Report.”
カナダの賃貸住宅建設、新規供給、将来的な住宅供給リスクについて参照。
Canada Mortgage and Housing Corporation (CMHC).(2026年). “2026 Mid-Year Rental Market Update.”
新築賃貸住宅の空室率や、借り手側の選択肢・交渉余地について参照。
Canada Mortgage and Housing Corporation (CMHC).(2026年夏). “Housing Market Outlook – Summer 2026 Update.”
人口増加の鈍化、新規供給と今後のRental Marketの見通しについて参照。
Government of Canada, Prime Minister's Office.(2026年8月5日). “Government of Canada and City of Toronto to build thousands of new rental homes.”
Torontoにおける27億カナダドル超の投資、5,600戸以上の新規賃貸住宅供給計画について参照。
Government of Canada – Toronto rental housing announcement
Reuters.(2026年8月5日). “Canada to invest C$2.7 billion to build rental housing in Toronto.”
カナダ政府によるToronto住宅投資計画と住宅 affordability 問題について参照。


