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2026/8/30
2026/9/26

【EU、食品包装の「永遠の化学物質」を規制】 ピザ箱やテイクアウト容器など、包装ルールを大幅刷新

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Ryodai

この記事を書いたライター

Ryodai

カナダのブリティッシュコロンビア大学に通い、心理学、認知システム、ビジネスなどを幅広く学ぶ。日本でずっと生まれ育ち、大学はICUに通うが、わずか4か月で退学し初の海外留学を経験する。海外大学生の目線から役に立つ情報を発信します!

こんにちは。現役海外大生のRyodaiです。

ピザの箱、ハンバーガーの包装紙、テイクアウト用の容器、電子レンジで作るポップコーンの袋。

普段あまり意識することはありませんが、こうした食品の包装には、油や水が染み込まないようにするため、さまざまな化学物質が使われています。

その中でも近年、世界的に規制の動きが広がっているのが、**PFAS(有機フッ素化合物)**と呼ばれる化学物質です。

EUでは2026年8月12日から、新しい「Packaging and Packaging Waste Regulation(PPWR:包装・包装廃棄物規則)」の適用が始まり、一定濃度以上のPFASを含む食品包装をEU市場で新たに販売することができなくなりました。対象にはテイクアウト容器やファストフードの包装紙、ベーカリー用紙、ピザ箱なども含まれます。

PFASは非常に分解されにくく、一度環境へ放出されると長期間残り続けることから、英語では**「Forever Chemicals(永遠の化学物質)」**とも呼ばれています。

ただし、今回のEUの規制は「ピザ箱の化学物質を一つ禁止した」というだけのニュースではありません。

EUでは包装ごみそのものが大きな環境問題となっており、2023年だけでも約7,970万トン、1人あたり約178kgの包装ごみが発生しました。そこで今回の新しい規則では、PFASの制限に加えて、2030年以降の使い捨て包装削減やリサイクル義務、過剰包装の削減など、私たちが普段目にする「包装」の仕組みそのものを大きく変える計画が進められています。

今回は、そもそもPFASとは何なのか、なぜ食品包装に使われてきたのか、そしてEUがなぜ今、包装全体のルールを大幅に見直しているのかを解説します。

EUで新しい包装ルールがスタート

EUでは2026年8月12日から、Packaging and Packaging Waste Regulation(PPWR)の適用が本格的に始まりました。

この規則は、商品の箱や袋、食品容器といった包装について、どのような素材を使うのかという製造段階から、使用後にどのように再利用・リサイクルするのかまでを一つのルールで管理する大規模な制度です。

これまでEU加盟国ごとに異なる部分があった包装ルールをEU全体で統一することで、環境負荷を減らすだけでなく、複数のEU加盟国で事業を行う企業にとっても制度を分かりやすくする狙いがあります。

その中で、8月12日から実際に始まった重要な規制の一つが、食品と直接触れる包装に含まれるPFASの制限です。

新しい規則では、一定の基準を超えてPFASを含む食品包装をEU市場へ新たに出すことができなくなりました。EU法ではPFASの種類や測定方法に応じて細かな濃度基準も設定されています。

なお、これは「すべてのPFASを完全にゼロにしなければならない」という制度ではなく、法律で定められた濃度以上のPFASを含む食品包装を規制する仕組みです。

また、8月12日以前にすでにEU市場へ出ていた対象包装を一斉に回収しなければならないわけではありませんが、それ以降に新たに市場へ出される食品包装については基準を満たす必要があります。

では、そもそもPFASとはどのような物質なのでしょうか。

そもそも「PFAS」とは?

PFASは一つの化学物質の名前ではなく、数千種類もの人工的な化学物質をまとめた呼び方です。

PFASには水や油をはじく、熱に強い、化学的に安定しているといった非常に便利な性質があり、食品包装だけでなく、衣類、化粧品、電子機器、自動車、航空機、消火剤など、さまざまな製品や産業で利用されてきました。

例えば、雨をはじくアウトドアウェアや汚れに強い素材などにもPFASが使われてきた例があります。

こうした便利な性質を生み出している理由の一つが、PFASが持つ非常に強い炭素とフッ素の結合です。

この結合は有機化学の中でも非常に強いため、熱や水、油などに対して高い耐久性を持ちます。

ところが、その「壊れにくさ」は、製品として使ううえではメリットである一方、環境に放出された後には大きな問題となります。

なぜPFASが食品包装に使われてきたの?

食品包装とPFASの関係を考えると、その便利さは非常に分かりやすいです。

例えば、熱々のピザを普通の紙の上に置けば、チーズや油が紙に染み込み、すぐにベタベタになってしまいます。

ハンバーガーやフライドポテトなどのファストフードも同じで、食品から出る油や水分に耐えられる包装が必要です。

そこで一部の食品包装では、紙などの表面に油や水をはじく性質を持たせるため、PFASが利用されてきました。

EUによると、これまでPFASの使用例があった食品包装には、

テイクアウト容器、ファストフードの包装紙、電子レンジ用ポップコーンの袋、ベーカリー用紙、ピザ箱

などがあります。

つまりPFASは、私たちが普段何気なく利用している「油が染みない便利な包装」を作るうえで役立ってきたわけです。

しかし近年、その便利さと引き換えに発生する長期的な環境・健康への影響が問題視されるようになりました。

なぜ「永遠の化学物質」と呼ばれている?

PFASが「Forever Chemicals」と呼ばれる最大の理由は、自然界で非常に分解されにくいことです。

一度環境へ放出されると長期間残り続け、地下水や河川、土壌などへ広がる可能性があり、汚染された場所からPFASを取り除くことも技術的に難しく、大きなコストがかかります。

さらに、一部のPFASは人や動物の体内に蓄積することも知られています。

ここで注意したいのは、数千種類あるすべてのPFASが同じ毒性を持っているわけではないということです。

ただし、欧州化学品庁(ECHA)によると、一部のPFASについては生殖への影響や発達への影響が確認されているほか、がんとの関連が指摘されているものもあります。また、一部ではホルモン系への影響も懸念されています。

PFASは一度環境へ出てしまうと非常に長い期間残るため、

「今すぐ大きな問題が起きるか」だけではなく、「何十年後まで環境に残り続けるものを今どこまで使うべきなのか」

という視点で議論されているのです。

EUでは以前からPFAS規制が進んでいた

実は、今回の食品包装規制がEUで初めてのPFAS規制というわけではありません。

EUでは2006年にPFOSの規制を始め、その後PFOAやPFHxSなど、問題が大きいと判断された特定のPFASを段階的に規制してきました。

2025年にはPFASを含む消火剤についても新たな規制が導入され、2026年3月にはECHAの科学委員会が、より幅広いPFASをEU全体で規制する案について支持を表明しています。

つまり今回の食品包装規制は、EUが進めているより大きなPFAS削減政策の一部分でもあります。

一方で、PFASは医療機器や半導体、航空宇宙産業など幅広い分野で使われているため、すべてを一律に禁止すれば、代替技術がまだ存在しない産業へ大きな影響が出る可能性もあります。

そのためEUでは、単純に「PFASは悪いから全部禁止」とするのではなく、代替品の有無や社会的な必要性なども考慮しながら、規制の範囲について議論が続いています。

今回、食品包装が比較的早い段階で厳しく規制された背景には、食品と直接接触する製品であり、PFASを使わない代替方法も存在するという事情があります。

問題はPFASだけではない?増え続ける包装ごみ

ただ、今回始まったPPWRを「PFAS規制」とだけ捉えると、このニュースの本当の大きさを見落としてしまいます。

EUが変えようとしているのは、包装そのものの使い方だからです。

Eurostatによると、EUでは2023年に約7,970万トンの包装ごみが発生しており、人口1人あたりに換算すると年間177.8kgとなります。

2013年と比較すると、1人あたりの包装ごみは約21kg増えています。

包装ごみの中で最も多いのは紙・段ボールで全体の40.4%、次いでプラスチックが19.8%、ガラスが18.8%となっています。

また、EUで使用されるプラスチックの約40%は包装用途で使われており、包装はEUの資源消費や廃棄物を考えるうえで非常に大きな存在です。

特に近年はネット通販やフードデリバリー、テイクアウトなどが普及したことで、

「商品そのものより箱が大きい」

「一度使っただけで捨てる容器が大量に出る」

といった問題も目立つようになりました。

EUは、何も対策を取らなければ2030年までに包装ごみがさらに19%増え、プラスチック包装ごみに限れば46%増える可能性があると予測していました。

そこで今回のPPWRでは、PFASだけではなく、包装ごみそのものを減らすためのさまざまなルールが導入されます。

2030年から包装はさらに大きく変わる

今回の規則は2026年8月12日から適用が始まりましたが、すべての制度が一度に始まるわけではありません。

今後数年間かけて段階的に新しいルールが追加されていきます。

まず2028年からは、EU全体で統一された包装の表示制度が導入される予定です。

現在は国によってリサイクル表示やごみの分別方法が異なる場合がありますが、包装に分かりやすい表示を付けることで、「この容器をどこへ捨てればいいのか」をより簡単に判断できるようにする狙いがあります。

そして2030年になると、変更はさらに大きくなります。

EU市場で販売される包装は原則としてリサイクル可能であることが求められ、プラスチック包装については一定割合の再生プラスチックを使用することも必要になります。

さらに、「そもそも必要のない包装を減らす」という考え方も強化されます。

つまり、

使う
→ 捨てる
→ リサイクルする

だけではなく、

最初から使う包装そのものを減らす

方向へ制度が変わっていくということです。

ケチャップの小袋やホテルのミニボトルも対象に

この変化を実感しやすいのが、2030年から予定されている一部の使い捨て包装の制限です。

例えばレストランなどで見かける、

ケチャップやマヨネーズなどの小さな個包装

や、ホテルに置かれている

使い切りサイズのシャンプーやボディソープ

など、一部の使い捨て包装が制限の対象となります。

これまでであれば一人分ずつ小さなプラスチック容器や袋に入れて提供していたものを、大きな容器や詰め替え式のディスペンサーへ変更するといった対応が増えていくと考えられます。

また、テイクアウトなどでも再利用可能な容器や、自分で容器を持参する仕組みを広げる方向で制度が設計されています。

こうして見ると、今回の規則は工場や包装メーカーだけに関係するものではなく、今後数年間でレストラン、ホテル、スーパー、ネット通販など、EUで暮らす人が日常的に利用するサービスの見た目まで少しずつ変えていく可能性があることが分かります。

ネット通販の「大きすぎる箱」も減る?

もう一つ面白いのが、ネット通販などで問題になっている過剰包装です。

小さな商品を注文したのに、届いた箱を開けると中身の大半が空気や緩衝材だった、という経験がある方もいるのではないでしょうか。

今回の新しい規則では、こうした必要以上に大きな包装についても、2030年以降に空きスペースを制限する仕組みが導入されます。

包装を小さくすれば、単に段ボールやプラスチックを節約できるだけではありません。

同じトラックや船により多くの商品を積むことができるため、輸送に必要な車両や燃料を減らし、物流全体の環境負荷を抑えることにもつながります。

そのためPPWRは「ごみを減らす法律」というだけではなく、商品の設計から物流、販売、廃棄までを含めた包装のライフサイクル全体を見直す制度となっています。

海外で暮らす大学生にも関係する?

ここまでの内容は、基本的にはEUの環境・産業政策についてのニュースです。

ただ、ヨーロッパで生活する学生にとっても、今後は意外と身近なところで変化を感じるかもしれません。

大学のカフェでテイクアウトをしたり、スーパーで食品を購入したり、フードデリバリーを利用したりする中で、これまで使われていた包装が別の素材へ変わったり、使い捨て容器そのものが減ったりする可能性があります。

また、2030年に向けて再利用可能な容器やRefillの仕組みがさらに広がれば、日本で慣れている買い物や外食とは少し異なるルールに出会うことも増えそうです。

ただし、今回のPFAS規制によって「ピザ箱やテイクアウト容器が使えなくなる」という意味ではありません。

変わるのは包装そのものではなく、その中で使える素材や化学物質の基準なので、企業側が新しい素材へ切り替えることで、基本的にはこれまでと同じように利用できます。

学生側で特別に何か対応しなければならない制度というよりは、

「ヨーロッパで生活していると、数年前とは包装の仕組みが少しずつ変わっている」

と知っておくくらいで十分だと思います。

まとめ

今回は、2026年8月12日からEUで適用が始まった、新しい包装・包装廃棄物規則について紹介しました。

今回特に注目されているのが、食品包装に含まれるPFASへの新しい規制です。

PFASは水や油をはじく便利な性質を持つため、これまでピザ箱やファストフードの包装紙、テイクアウト容器などにも利用されてきましたが、非常に分解されにくく、環境中に長期間残り続けることから「Forever Chemicals」と呼ばれています。

EUでは8月12日から、一定濃度以上のPFASを含む食品包装を新たに市場へ出すことができなくなりました。

しかし、今回のニュースで本当に重要なのはPFASだけではありません。

EUでは2023年だけで約7,970万トン、1人あたり約178kgもの包装ごみが発生しており、対策を取らなければ2030年には包装ごみがさらに19%、プラスチック包装ごみは46%増えると予測されていました。

そこでEUは、PFASのような有害物質を減らすだけでなく、2030年に向けて、

包装をリサイクル可能にする
→ 再生プラスチックの利用を増やす
→ 一部の使い捨て包装を減らす
→ 過剰包装を減らす
→ 再利用・詰め替えを増やす

という、包装そのものの仕組みを大きく変えようとしています。

ピザの箱やケチャップの小袋といった非常に身近なものから始まっていますが、その裏側にあるのは、EUが進める大規模な「使い捨て社会から循環型経済への転換」です。

普段、商品を購入するときに中身は見ても、その箱や袋まで気にする機会はあまりありません。

しかし今回の新しい規則によって、今後ヨーロッパでは**「何を売るか」だけでなく「どう包んで売るか」まで大きく変わっていく**ことになりそうです。


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参考文献

European Commission, Directorate-General for Environment.(2026年8月11日). “New EU rules on packaging enter into application.”
PPWRの適用開始、食品包装へのPFAS規制、今後の包装・リサイクル制度について参照。
European Commission – New EU rules on packaging

European Commission.(2026年8月12日). “New packaging rules for less waste and easier recycling.”
2030年以降の使い捨て包装規制、再生プラスチック、リサイクル、過剰包装削減などについて参照。
European Commission – New packaging rules for less waste and easier recycling

European Union.(2025年). “Regulation (EU) 2025/40 on packaging and packaging waste.”
食品接触包装に含まれるPFASの具体的な濃度基準など、PPWRの法的要件を参照。
EUR-Lex – Regulation (EU) 2025/40

European Commission.(2026年). “Guidance document for Regulation (EU) 2025/40 on packaging and packaging waste.”
2026年8月12日以前に市場へ出された包装の扱いなど、PFAS規制の実務的な適用について参照。

European Chemicals Agency (ECHA). “Per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS).”
PFASの性質、用途、環境中での残留、人や環境への懸念について参照。
ECHA – PFAS overview

European Chemicals Agency (ECHA).(2026年3月26日). “ECHA supports PFAS restriction with targeted derogations.”
EU全体で検討されている、より広範なPFAS規制の動向について参照。

Eurostat.(2025年10月22日). “Plastic packaging waste in the EU: 35.3 kg per person.”
2023年のEUにおける包装廃棄物量、1人あたりの廃棄量、包装素材別の構成について参照。
Eurostat – Packaging waste statistics

Reuters.(2026年8月11日). “EU packaging rules take effect with limits on ‘forever chemicals’, plastics curbs.”
PFAS規制を含むEUの新しい包装ルールと、企業・包装業界への影響について参照。

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