- 2026/8/8
- 2026/8/11
【AI需要急増で世界的なメモリ不足】 PC・スマホ価格にも影響か


この記事を書いたライター
Ryodai
カナダのブリティッシュコロンビア大学に通い、心理学、認知システム、ビジネスなどを幅広く学ぶ。日本でずっと生まれ育ち、大学はICUに通うが、わずか4か月で退学し初の海外留学を経験する。海外大学生の目線から役に立つ情報を発信します!
こんにちは。現役海外大生のRyodaiです。
ここ数年、ChatGPTをはじめとする生成AIが急速に普及し、GoogleやMeta、Microsoftなどの企業がAIへの投資を拡大しています。
「AIの成長」と聞くと、新しいサービスや仕事の変化を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし最近、そのAIブームが思わぬところにも影響を与え始めています。
それは、パソコンやスマートフォンの価格です。
2026年6月、AppleはMacBookやiPadの価格を引き上げました。背景にあるのが、AIデータセンター向けの需要急増によるメモリやストレージ部品の価格上昇です。
例えばアメリカでは、512GBモデルのMacBook Airが1,099ドルから1,299ドルへ、128GBモデルのiPad Airが599ドルから749ドルへ値上げされました。Appleは、これまで部品価格の上昇をできる限り吸収してきたものの、それ以上は難しくなったと説明しています。
一見すると、これは半導体メーカーやテクノロジー企業に関するニュースです。
しかし、海外大学への進学を控えている学生にとっては、意外と身近な問題かもしれません。
大学生活では、ノートパソコンやスマートフォン、タブレットなどはほぼ必需品です。特に海外進学を機に新しくデバイスを購入する場合、数百ドルの値上がりでも新生活の初期費用には大きな差が生まれます。
今回は、なぜAIブームによってメモリ不足が起きているのか、そしてそれが海外大学生の新生活や学習環境にどのような影響を与える可能性があるのかを解説します。
AIブームで世界的なメモリ需要が急増
今回のニュースを理解するために、まず現在のAIブームがどれほど大きなものなのかを見てみましょう。
ChatGPTのような生成AIを動かすためには、非常に大きなデータセンターが必要です。
その中では、NVIDIAなどが開発するAI向けプロセッサとともに、大量のデータを一時的に保存・処理するための「メモリ」が使われています。
Google、Microsoft、Meta、Amazonなどの企業がAIデータセンターへの投資を拡大したことで、こうしたメモリへの需要も急激に増えました。
実際、世界最大級のメモリメーカーであるSamsung Electronicsは2026年8月、AIの利用が「モデルを学習させる段階」から「実際にユーザーへ回答を生成する段階」へ広がったことで、より大容量のメモリやストレージが必要になっていると説明しています。
さらに、SK hynixのCEOは、2027年にはメモリ業界が過去最大規模の供給不足に直面する可能性があるとの見方を示しています。同社は生産設備への投資を進めていますが、それでも需要が生産能力を上回る状態が2030年以降まで続く可能性があるとしています。
つまり、現在起きているのは単なる一時的な品薄ではなく、AIの急成長によって、世界中のメモリ需要そのものが大きく変化しているということです。
そもそも「メモリ不足」って何?
「半導体不足」「メモリ不足」と聞いても、何が不足しているのか分かりにくいかもしれません。
パソコンやスマートフォンには、さまざまな種類の半導体が使われています。
その中でも今回特に重要なのが、データを一時的に扱うDRAMや、写真・動画・アプリなどを保存するNANDフラッシュメモリです。
例えばパソコンの商品ページで、
「16GBメモリ」
「512GB SSD」
といった表記を見たことがあると思います。
私たちが普段使っているパソコンやスマートフォンにも、こうしたメモリやストレージが欠かせません。
一方、AI向けにはHBM(High Bandwidth Memory)と呼ばれる、非常に高速なメモリが大量に使われています。
もちろん、AIサーバー用のメモリとスマートフォン用のメモリがすべて同じというわけではありません。
しかし、半導体メーカーが限られた生産設備や投資を、利益率が高く需要も急増しているAI向け製品へ振り向ければ、一般的なパソコンやスマートフォン向けの供給にも影響が出てきます。
実際、2026年7月時点でDRAMメーカーが満たせている需要は全体の75〜80%程度との分析もあり、2027年にはさらに供給が厳しくなる可能性が指摘されています。
なぜAIが増えるとパソコンまで高くなるの?
ここが今回のニュースで一番面白いところです。
普段ChatGPTを使っている学生からすると、
「AIデータセンターが増えることと、自分が買うMacBookに何の関係があるの?」
と思うかもしれません。
しかし、半導体を作れる工場や設備には限りがあります。
現在、メモリメーカーにとってAI関連企業は非常に大きな顧客になっています。
例えば、AI向けチップを提供するNVIDIAや大手クラウド企業は、数年間にわたる長期契約を結んで大量のメモリを確保しています。
Sandiskは2026年8月時点で、6社の顧客と総額939億ドルに及ぶ長期供給契約を結んでいます。2027年度には同社の生産量の半分、2028年度には約3分の2がこうした契約で販売される見込みです。
メーカー側からすれば、何年分もの注文をまとめて確保してくれるAI企業向けの製品を優先するのは自然な流れです。
その結果、スマートフォンやパソコンメーカーが購入するメモリの価格も上がりやすくなります。
そして部品の価格が上がれば、最終的には私たちが購入するパソコンやスマートフォンの価格にも反映される可能性があります。
いわば、
AI需要の急増
→ メモリ需要が増える
→ 供給が追いつかなくなる
→ 部品価格が上がる
→ パソコンやスマートフォンも高くなる
という流れです。
AppleもMacBook・iPadを値上げ
この影響は、すでに実際の商品価格にも表れ始めています。
2026年6月、Appleはアメリカで複数のMacBookやiPadの価格を引き上げました。
例えば、
- MacBook Neo:599ドル → 699ドル
- MacBook Air(512GB):1,099ドル → 1,299ドル
- MacBook Pro(1TB):1,699ドル → 1,999ドル
- iPad Air(128GB):599ドル → 749ドル
となっています。
MacBook Airで見ると、一度に200ドルの値上げです。
Apple自身も、メモリやストレージ部品の急激な価格上昇について、これまでに経験したことがないほど大きく、速い変化だと説明しています。
その背景にあるメモリ価格の上昇も非常に大きく、調査会社TrendForceのデータとしてReutersが伝えたところによると、DRAM価格は2026年第1四半期に最大98%上昇し、第2四半期にも58〜63%上昇すると予測されていました。
さらに7月末、AppleのTim Cook CEOは、同社が依然としてかなり大きな部品供給の制約を受けており、メモリについて別の供給先も検討していると明らかにしています。
つまり、「そのうち電子機器が高くなるかもしれない」という話ではなく、すでに一部の商品では価格への影響が始まっているのです。
iPhoneや他のスマートフォンにも影響する?
ここで気になるのが、スマートフォンです。
特に海外大学への進学を機に、現地の通信会社と契約し、新しいiPhoneやスマートフォンを購入しようと考えている方もいると思います。
現時点では、Appleは今回の価格改定でiPhoneの価格を引き上げていません。
ただし、Reutersが取材したアナリストの間では、今後の新型iPhoneについて値上げを予想する声も出ています。Appleもメモリ価格の上昇が今後さらに事業へ影響すると説明しています。
Appleだけの問題でもありません。
Qualcommも2026年7月、半導体を含むサプライチェーン全体でコストが大幅に上昇しているとして、9月から一部製品の価格を引き上げる方針を示しました。
そのため、今後のメモリ不足が続けば、MacBookやiPadだけではなく、Windows PCやAndroidスマートフォンなどにも価格上昇の影響が広がる可能性があります。
もちろん、すべての製品が必ず値上がりするとは限りません。
メーカーによって部品の調達方法や在庫、価格戦略が異なるためです。
ただ、「電子機器は毎年性能が上がるのに価格はあまり変わらない」というこれまでの感覚が、AIブームによって少し変わり始めていることは意識しておいてもよさそうです。
なぜ海外大学生にとって重要なの?
ここまでの話だけを見ると、今回のニュースは「ガジェットが少し高くなる」という話に見えるかもしれません。
しかし、海外大学生にとってパソコンは単なる趣味の道具ではありません。
大学では、
レポートを書く、授業資料を読む、オンライン授業に参加する、グループワークをする、プレゼンを作る、データを分析する、プログラミングをする、インターンや就職活動をする。
こうした作業のほとんどでパソコンを使います。
専攻によっては、ある程度以上の性能を持ったパソコンが必要になることもあります。
例えば、Computer ScienceやEngineering、Architecture、Design、映像制作などでは、大学や学部から推奨スペックが指定される場合があります。
そのため、
「高くなったから買わない」
という選択が簡単にできないのが学生にとって難しいところです。
さらに海外大学への進学では、パソコンだけを買えば終わりというわけでもありません。
渡航前後には、航空券、ビザ、保険、寮費、家具、教科書、携帯電話など、さまざまな初期費用が一度に発生します。
そこにMacBookやスマートフォンの数百ドル単位の値上がりが加われば、新生活の予算にも無視できない影響が出てきます。
新生活では想像以上にデバイスにお金がかかる
例えば海外大学へ進学するタイミングで、
ノートパソコン、スマートフォン、タブレット、イヤホン、外付けSSD、充電器や変換アダプターなどを新しく揃えるとします。
一つひとつは必要なものでも、合計すればかなり大きな金額になります。
特にApple製品を中心に揃える場合、パソコンとスマートフォンだけで1,500〜2,000ドル以上になることも珍しくありません。
さらに、前回の記事で紹介したように、日本から購入費用を送る場合には為替の影響も受けます。
例えば200ドルの値上げは、1ドル=150円なら日本円で約3万円です。
同じ製品が値上がりし、さらに円安も進めば、日本から留学費用を支払う学生にとっては二重の負担になります。
「半導体のニュースだから自分には関係ない」と思っていたものが、実際には留学を始めるときの初期費用につながってくるのです。
パソコン購入でできる対策
では、これから海外大学への進学を控えている学生はどうすればよいのでしょうか。
まず大切なのは、必要以上に高性能なモデルを買わないことです。
パソコンは高価なので、
「せっかくだから一番性能がいいものを買っておこう」
と考えたくなるかもしれません。
しかし、文系の学生がレポート作成やオンライン授業を中心に使う場合と、動画編集や3Dモデリングをする学生では、必要な性能が大きく異なります。
購入前に大学や学部のウェブサイトを確認し、推奨スペックが公開されていないか確認しておくと安心です。
また、学生向けの割引制度も確認しておきましょう。
AppleやMicrosoftをはじめ、多くのメーカーが大学生向けの教育価格を用意しています。大学によっては、特定のメーカーとの提携割引が利用できることもあります。
新品にこだわらないのであれば、メーカーが整備した認定中古品や、状態の良い中古製品も選択肢になります。
特にパソコンの場合、1〜2世代前のモデルでも大学生活には十分な性能を持っていることがあります。
もう一つ確認したいのが、日本で買うか、留学先で買うかです。
価格だけではなく、
- 学生割引
- 為替レート
- 消費税・Sales Tax
- キーボード配列
- 保証や修理
- 電源プラグ
- 購入後のサポート
なども比較して決める必要があります。
単純に「海外の方が安そう」「日本で買った方が安心」と判断するのではなく、自分が数年間使うことを考えて選ぶのがおすすめです。
そして、すでに問題なく使えるパソコンを持っているのであれば、大学入学に合わせて必ず買い替える必要はありません。
今回のメモリ不足が長期化する可能性を考えると、使えるデバイスをできるだけ長く使うことも、立派な節約方法の一つです。
Ryodai さんまとめ
今回は、AIブームによって世界的なメモリ需要が急増しているニュースと、それが海外大学生に与える影響について解説しました。
生成AIの普及によって、GoogleやMetaなどの企業は巨大なAIデータセンターへの投資を進めています。
その結果、AI向けメモリの需要が急増し、世界的にメモリ供給が追いつきにくい状況が生まれています。SK hynixは2027年に過去最大規模の供給不足になる可能性を示しており、SamsungやSandiskなどもAI向け需要の強さを報告しています。
そして、その影響はすでに私たちが使う製品にも表れ始めています。
Appleは2026年6月、メモリやストレージの価格上昇を背景にMacBookやiPadを値上げしました。
一見すると、AI企業や半導体メーカーだけに関係するニュースですが、実際には大学で使うパソコンやスマートフォンの価格を通じて、学生にも影響する可能性があります。
特に海外大学へ進学する際は、学費や家賃、航空券など、さまざまな出費が一度に発生します。
その中でパソコンは、簡単に削ることのできない支出の一つです。
だからこそ、「最新モデルだから」という理由だけで選ぶのではなく、自分の専攻に必要な性能を確認し、学生割引や中古製品、日本と留学先の価格差なども比較することが大切です。
AIの成長は、新しいサービスや仕事だけを変えているわけではありません。
私たちが毎日使っているパソコンやスマートフォンの価格にも、少しずつ影響が広がっています。
留学準備をするときには、学費や家賃だけでなく、こうした新生活に必要なデバイスの費用も、少し余裕を持って予算に入れておくとよさそうです。
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参考文献
- TrendForce.(2026年3月31日). “AI Server Demand to Drive Memory Contract Price Increases in 2Q26 as CSPs Secure Supply via Long-Term Agreements.”
AI・データセンター需要によるDRAM/NANDの供給逼迫、価格上昇、PC・スマートフォン向けメモリへの影響を参照。
https://www.trendforce.com/presscenter/news/20260331-12995.html - Samsung Electronics.(2026年7月30日). “Samsung Electronics Announces Second Quarter 2026 Results.”
AIインフラ投資の拡大によるHBM、サーバーDRAM、eSSD需要の増加と、2026年下期も供給不足が続くとの見通しを参照。
https://news.samsung.com/global/samsung-electronics-announces-second-quarter-2026-results - SK hynix.(2026年7月29日). “SK hynix Announces 2Q26 Financial Results.”
AIインフラ需要の拡大、高性能AIサーバー向けメモリ需要、DRAM・NAND価格上昇について参照。
https://news.skhynix.com/en/q2-2026-business-results/ - Micron Technology.(2026年6月24日). “Fiscal Q3 2026 Earnings Call Prepared Remarks.”
AI需要によってDRAM・NAND需要が供給を上回り、需給逼迫が2027年を超えて続く可能性があるとの見通しを参照。
https://investors.micron.com/static-files/631b1a32-5537-46ae-8f40-82e42fc79dfe - Counterpoint Research.(2026年7月22日). “Memory Crunch Ends PC Recovery as Global Shipments Decline for First Time Since Q1 2025.”
メモリ供給不足と価格上昇がPC市場に与えている影響について参照。
https://counterpointresearch.com/en/insights/global-pc-shipments-decline-q2-2026-memory-crisis - Counterpoint Research.(2026年3月9日). “Memory Price Surge Triggers Shifts in Smartphone BOM Structure.”
メモリ価格上昇によるスマートフォンの部品コストへの影響を参照。高容量構成では、メモリ関連のBOMコストが大きく上昇するとの分析が示されています。
https://counterpointresearch.com/en/insights/Memory-Price-Surge-Triggers-Shifts-in-Smartphone-BOM-Structure - TrendForce.(2026年5月14日). “Mobile DRAM Contract Prices Continue Rising in 2Q26.”
スマートフォン向けDRAM価格の上昇と、メモリコスト増がスマートフォン市場へ与える継続的な圧力について参照。TrendForceは2026年のスマートフォン平均DRAM容量を8.5GBと予測しています。
https://www.trendforce.com/presscenter/news/20260514-13044.html - Apple Inc.(2026年3月3日). “Apple introduces the new MacBook Air with M5.”
MacBook Airのストレージ容量やAI向け性能など、2026年モデルの製品仕様について参照。AppleはM5 MacBook Airを512GBからの構成としています。
https://www.apple.com/newsroom/2026/03/apple-introduces-the-new-macbook-air-with-m5/ - Reuters.(2026年6月25日). “Apple raises prices of MacBooks, iPads as memory costs skyrocket.”
AppleによるMacBook・iPadの価格改定と、メモリ・ストレージ価格上昇との関係について参照。 - Reuters.(2026年7月30日). Appleの2026年4–6月期決算に関する報道。
Appleがメモリなどの部品供給制約に直面していることや、供給先の多様化を検討していることについて参照。


